『寝台特急(ブルートレイン)殺人事件』

寝台特急(ブルートレイン)殺人事件 (光文社文庫)
いま、何故か西村京太郎がナツい。
…かどうかは知りませんが、勝手にブーム再燃ということで、ブクオフ100円で購入。
子供の頃、母親が西村京太郎を好きだったので、読み終わったら貸してもらって片っ端から読んだものです。ちなみにこの『寝台特急殺人事件』は、一連の「トラベル・ミステリー」と呼ばれるシリーズの、記念すべき第一作目*1


東京駅から西鹿児島駅まで走る寝台特急はやぶさ>。その車中でどこか陰のある美人に出会ったルポライターが、深夜に何者かに睡眠薬を飲まされ、眼が覚めると違う寝台特急に乗せられていることに気が付く。さらに<はやぶさ>で九州に向かっていたはずのその女性は、何故か翌朝、東京の多摩川で水死体で発見される…。


要所要所で十津川警部が、そこまでの謎を整理してくれるのが親切。そのつど新たな疑問点が出てくるので、「どうなるの?」と読者を引き込む構造になっている。
でもそれは、逆に言えばその構造のなかで勝手にミステリーが作られて、勝手に解決されていくだけ…ということになる。あまり読者が推理しなくてもいいのだ。
ちょっとあきれたのは、ラスト20ページ*2になって突然容疑者が出頭してきて、細かい謎をベラベラとしゃべりだすこと。なんだこりゃ。
実はこういったご都合主義に塗り固められた“ミステリー”だったのだ。子供のときは何も思わなかったけど。


何も考えずに読めて、さらに旅情をかきたれられる。まあ人気が出ますわな。

*1:ただし十津川省三と亀井定雄(カメさん)のコンビ自体は、これよりも前に「消えたタンカー」などの作品ですでに登場済み。

*2:火曜サスペンス劇場」だったら、岩崎宏美の「聖母たちのララバイ」が流れ出すところ。