「ペイルライダー」

ペイルライダー [DVD]
イーストウッド監督・主演の西部劇「ペイルライダー」を見た。勧善懲悪をストレートにやった痛快娯楽作だった。
はるかな山脈のふもとに広がる森林の手前を、十騎ほどのならず者たちが疾駆するオープニング。遠すぎて音も聞こえない。まるでミニチュアのようでもある。カメラはやがて一行に近づき、そこで初めて駆け足の轟音が聞こえる。この一連の描写に、幕開けからいきなり引き込まれてしまった。
このように、大地を踏み鳴らして現れる悪党たちと、いつもいきなりその場に現れる「牧師」(イーストウッド)。ヨハネの黙示録にある、「第四の封印が解かれ青白い馬に乗ってきたそのものの名は使徒」という章句さながら、芦毛の白い馬に乗って突然姿を現す主人公は、あくまで超越的な存在感を示す。西部の町の日常生活と非日常的存在の対比のようで面白かった。
そんな超越的存在だから、悪者にはきっと負けないだろうと思いつつ、ラストの元保安官たちとの対決は見せる。撃ち合いのさなか突如姿を消した牧師、地面には彼がかぶっていた帽子だけが残されている。やがて全ての戦いが終わった後、その場所に戻ってきた牧師は静かに帽子を手にとってかぶり直し、そして町を出て行くのだった…。