「ロッキー・ザ・ファイナル」

ロシアの刺客ドラコとの死闘から十数年。エイドリアンは死に、フィラデルフィアの街は再開発が進み、息子は職場でもどこでもつきまとう父・ロッキーの影(「こいつベビー・ロッキー!」「父さんの子だから就職できたんだ」)に悩まされている。

「同じ場所に長くいるとその場所が自分自身になる」

ロッキーは古いものがどんどん失われていく街の中で、過去に生き未来への展望を描けない。
だがそんなある日、テレビのスポーツチャンネルが余興でやっていた、往年の名選手と現役の選手とのバーチャル・ボクシング対戦(笑)で、無敵のチャンピオンがロッキーに敗れるという結果が出た。これを機に現実のエキシビションでの対戦が実現する。
普通に考えればどう考えても無謀で茶番とすら思える試合だが、目標を得たロッキーは黙々と体作りを始め、過去作のトレーニングシーンが再現される。生卵を飲み下し、フィラデルフィア公会堂の長い階段を駆け上がる…このあたりの場面を見るだけで、旧作のファンとしては割と満足できた(どうせ本作そのものにはあまり期待していなかったから)。
試合の場面はテレビ中継画質になっていて、割と臨場感があふれていた。無敵のチャンピオンの体がちょっと緩めだったのは気になったが、まあご愛嬌ということで。

「人生ほど重いパンチはない。だが大切なのは耐えて前に進み続けることだ」

過去4作以上にありえない話にはなっているのだが、それはロッキーシリーズファンにとっては最初から了解済みのこと。何も期待しないで見たせいか、最後には爽やかな感動すら覚えたのは、ファンの贔屓目だろうか?
「Italian Stallion(イタリアの種馬=ロッキーのリングネーム)」が残した「不屈の精神」の血脈は、アクション映画ファンたちの心にいつまでも受け継がれていくことだろう。