「クジラと生きる」

NHKスペシャル「クジラと生きる」を見た。
江戸時代から捕鯨をなりわいとしている和歌山県太地町。一昨年に映画「The Cove」が公開され、アカデミー賞を受賞してから、同作の舞台となったこの太地町は一躍有名になった。今回のNHKスペシャルは、映画公開後の太地町の風景を半年にわたり密着取材したもの。


カメラに収められた太地でのシーシェパードの妨害が、かなり悪質なのだ。漁師さんのトラックの前に立って進めなくしたり、相手が英語が話せないと思ってひどい言葉を吐きかけたり。
もっとも、彼らシーシェパードに対抗するには、まともに議論しようとするのではなくて、スポンサー集めに長けたシーシェパード以上に、優秀なPR会社を雇って広く世論を味方に付けることだと思う。
番組では、漁師さんたちが港で焚き火を囲みながら、善後策を話し合う朴訥な姿を映していた。それはそれで心を打つんだけど、英語も話せない漁師さんたちに苦労させるだけではなくて、ちゃんとした抗議やPRを、行政がお金を出して行うべきだと思う。


あと思うのは、「クジラを食べるのは日本の文化」とむやみに国民全体に敷衍するのではなくて、「クジラを食べるのは太地に根付いた文化、その太地に住む人は日本国民だから政府が守る義務がある」的な話にしたほうがいいと思う。
それと、捕鯨問題を文化の問題にすると、とかく水掛け論になりがちなので、実際絶滅の危機にあるのかどうかをちゃんと明らかにするべき、というのが私の意見。科学的な数字を積み上げて、上手にPRしていく術を持たなければ、どうにもならない気がする。


これは以前捕鯨についていくつかエントリを書いたときにも指摘したが、そもそも大型のクジラを絶滅の危機に追いやったのはアメリカによる捕鯨なのだ。彼らは石油が出てからクジラに油資源としての価値を見出さなくなり、あっさり捕鯨をやめただけ。
クジラを取るために開国を要求してきておいて(黒船)、いままたクジラを取らせなくするために「国際基準」を押し付けようとしている…というのが、捕鯨反対を唱える欧米諸国に対する私のイメージ。
クジラに知能や文化があるというのなら、まずはかつての大量“虐殺”をきちんと清算する姿勢を見せるのが筋ではないだろうか。そしてそれは、現在も必要を見出して捕鯨を行っている人たちの行動まで制約するものでは、決してないはずだと思う。