『愛と死の紋章』

愛と死の紋章 (1971年)

愛と死の紋章 (1971年)

短編集『鳥』を読んでこの作者が気に入ったので、ダフネ・デュ=モーリアのほかの作品を図書館で探して借りてきた。
この長編(原題「The Flight of the Falcon」、この日本語タイトルはひどいと思う)は、詳しいことはよくわからないが、一度筆を折っていたデュ=モーリアが「どうしてもこれだけは書きたかった」と発表した作品らしい。英国人の作者にしては珍しく、全編イタリアを舞台とした異色作。
イタリアの田舎の大学町を舞台に、殺人事件の容疑者となった主人公と、学生を扇動する大学教授(アジテーションに芸術の味付けをするあたり、三島っぽかった)の兄弟を巡る、一風変わったミステリ。
ただ、正直言ってなぜこれを「どうしても書きたかった」のか、よくわからなかった。2作しか読んでいないのでアレだけど、デュ=モーリアは長編より短編で才能が発揮されるタイプの作家かもしれない。アイデア一発勝負のところがあるように思う。