『ジャズ・カントリー』

ジャズ・カントリー (文学のおくりもの ベスト版)
本書はいわゆるジュブナイル小説で、高校卒業を間近に控えた主人公の少年が、「サヴォイ」でプレーするジャズ・ミュージシャンたちと触れ合う中で自分を確立していく…というストーリー。1964年発表という時代背景もあって、人種問題も色濃く主題として反映されている。筆者のナット・ヘントフはもともとはジャズ評論家の方らしい。
主人公はトランペット吹きを目指す白人の高校生なのだけれど、サヴォイに出演するミュージシャンに「白人のくせに…」「金持ちの子供のくせに…」とやんわり遠ざけられ、初めて人種問題というものに気付かされる。

「そんなきみ、ニューヨークが差別なしになるなんて。冗談だよ、それは。だれも笑いもしないような冗談さ。」

この辺の空気というのが、日本で生まれ育った私なんかには新鮮で興味深かった。