そばや清兵衛


知る人ぞ知る、十日町のどの辺かというのが表現できないくらい微妙な場所にある蕎麦屋。いや、実際には検索すればいろいろ出てくるのだけれど。
何でも、もともとは製麺屋さんだったのが、あまりの美味しさが評判になって自分で店を出すようになったのだとか。「美味すぎる製麺屋」、である。その噂もなるほど真実味を帯びるほどの麺の喉越し。
十日町はもとより新潟の蕎麦は「布海苔(ふのり)」という海藻の一種をつなぎに使った「ふのり蕎麦」が主流で、私はこのつるつるとプラスチックな舌触りのふのり蕎麦(「須坂屋」とか「小嶋屋」で出される「へぎそば」のアレ)というものがあまり好きではないのだが、ここの蕎麦を手繰って初めてその認識を改めさせられた。蕎麦の香りと布海苔の滑らかさが絶妙にバランスを保っているのだ。
かてて加えて、新潟の蕎麦屋について私が一番不満に思っている「だし汁」の味もなかなかだった。何故か当地の蕎麦屋は、麺にはこだわっていてもつゆが投げやりというか画竜点睛を欠く店が多いのだが*1、こちらの汁は蕎麦によく合っていた。

*1:思うに布海苔蕎麦はあっさりしすぎているため、通常の出汁では最後のほうになるとシャブシャブになって飽きてしまうのかもしれない。