『競馬必勝放浪記』

競馬必勝放浪記 (祥伝社新書147)
講談社入社後、「月刊現代」編集部を皮切りに編集者生活を勤め上げ、「週刊現代」誌や「FRIDAY」誌などの編集長も歴任した筆者の元木昌彦氏が、公私共に情熱を傾けた競馬を軸に、関わってきた作家や芸能人などを振り返ったエッセイ。
氏は「大事なことは全て競馬場で学んだ」と言い切る。それは競馬そのもので何かを培ったというよりは、競馬という共通の趣味を通じて深く関わりあった作家たちから、酒の飲み方から人生観までありとあらゆる事柄を学んだ…ということだと思う。
山口瞳がいて、寺山修司がいて、大橋巨泉*1が競馬界に苦言を吐いていた、いわば日本の競馬文化にとって黄金期ともいえる時代がかつてあった。
そんないかがわしくて輝かしい時代を肌で知る筆者が、当時をノスタルジーいっぱいに描写していくわけだが、これを読んでうらやましいというよりもどこか虚しく感じてしまった。
政策として競馬のポピュライズが推し進められてきた今となっては、もうそんな時代はおそらく二度とは来ないだろうから。

*1:「巨泉」というのが元々は氏が大学生のときに付けた俳号(俳句を作るときのペンネーム)だったと初めて知った。学生時代の途中で、すごい作品を作る後輩が入ってきたことから俳句はやめてしまったそうだが、その後輩というのが、後の寺山修司だったとか。