新潟:田舎家

食通で知られる作家・翻訳家の吉田健一は、吉田茂元首相の長男。ということはつまり麻生首相の伯父にあたる。
その吉田氏に『舌鼓ところどころ』という食に関するエッセイ集がある。数年前に古本屋で見つけて以来、折に触れパラパラとめくっている。

舌鼓ところどころ (1980年) (中公文庫)

舌鼓ところどころ (1980年) (中公文庫)

この本では大阪、長崎、金沢、神戸、酒田などなど日本各地の食や旅の思い出について書かれている中で、新潟の食に一章が割かれている。新潟にやってきた時にこの章を一読したが、そこで氏が「新潟でもサラリイマンが行く店の一軒」として、古町の「田舎家」(同書の中では「田舎屋」と誤記されている)という店を訪ねて新潟の郷土料理である「のっぺい汁」と「三平汁」、それに「八つ目鰻の筒焼き(丸焼き)」を食べさせられた話が載っていた。
それ以来この店が気になっていたので、今日は家族で古町近辺へ出かける予定があったついでに訪ねてみた。
実はこの田舎家というお店は、「わっぱ飯」を考案したお店としても有名なのである。店の何代か前の主人が、当時の弁当箱であった「わっぱ」を使って、「どうにかして温かいお弁当を作れないか」と思案し、具を乗せた白米を蒸し上げることを思い付いたのだそうだ。
 
(左)冬季限定の牡蠣わっぱ飯。味噌だれを塗った剥き身の牡蠣貝を並べ、白髪ねぎと柚子の皮で風味を添えている。私は濃厚な味のこのわっぱ飯が気に入った。
(右)鮭といくらの親子わっぱ。鮭が名産の下越地方ではスタンダードな取り合わせ。つれあいはあっさり味のこちらのわっぱの方が美味しいと言っていた。

愛息用にミニサイズの蟹わっぱ飯もいただいた。
 
左は「神馬藻(じんばそう)」という粘り気のある海草のおひたし。モロヘイヤのようでもあり、不思議な食感。
右は里芋や蓮根、きのこ類、それにイクラを乗っけた煮物「のっぺ汁」。新潟の冬を代表する料理である。


昨日から今日にかけて新潟市内は雪に降り込められたせいか、昼時なのにお店に客の影は少なかった。それもあって、お店のお姐さんたちが何くれとなく気を使ってくれて、大変助かった。子連れだとただでさえこちらが気後れしてしまうので、こういう気遣いはありがたい。