『新源氏物語(上)』

新源氏物語 (上) (新潮文庫)
横浜からの帰りの上越新幹線車内で、田辺聖子源氏物語(全3巻)に着手。
ご案内のとおり、今年は紫式部によって『源氏物語』がものされてから1000年の区切りの年とされている。それでまあ私も読み返してみようと思い、谷崎訳で読もうか橋本訳で読もうか、それともいっそ『あさきゆめみし』にしようか…と迷っていたのだが、結局高校生の頃に古文の勉強と思い一度通読した田辺訳に落ち着いた。
一応原文で読むという選択肢もあったのだが。
田辺版は意訳の多い逐語訳…といった感じで、原文と照らし合わせながら読んでも大体構成が揃っているので、古文の問題を解くときに随分助けられたものだった。それでいて細やかな感情表現に富んでいて、そこはやはり女性作家同士特有の共感があるのかなあ、と思う。


冒頭「夕顔」の章で、光源氏と頭の中将、左馬の頭、藤式部の丞の4人が恋愛談義を交わす場面があるのだが、何せ当時の文章は主語が全然書かれないのでどの発言が誰のものか分かりにくく、学生時代にこの部分の原文を読み解くのにひどくてこずったのを思い出し、かなり懐かしかった。
それより何より、葵の上、六條御息所、空蝉、軒端荻、藤壺、夕顔、紫の上などなど、それぞれに共感したり味気なく思ったりしながら割とのめり込んで読んでいた思い出があるので、まるで昔付き合っていた女性を順番に眺めてるような妙な気分になった。