『天地人(上)』
来年のNHK大河ドラマの原作本。
つい昨年、ご当地ゆかりの上杉謙信を準主役にした「風林火山」をやっていたばかりだが、またまた新潟ゆかりの武将・直江兼続を主人公にした話を取り上げたのは、やはり度重なる震災へのNHKからのエールという意味合いもあるのかも。
直江兼続は額に大きな「愛」の字を掲げた兜を愛用していたそうだが*1、これは帰依していた愛染明王の愛とも愛宕権現の愛とも言われているそうだ。
その「愛」の字の兜や、上杉謙信やその養子の景勝に寵愛されたことなどからの連想で、兼続は謙信の“お稚児さん”だったとか、景勝とホモセクシャルな関係にあったとか、いろいろ言われているそうだが、まあ衆道は戦国時代の武将なら多かれ少なかれやっていただろうことなので、あれこれ詮索はするまい。
作中にもこんなエピソードが紹介されていた。武田信玄とその家臣・高坂弾正の話である。
高坂弾正正忠昌信──。
世に名高い、武田二十四将のひとりである。もとは甲州石和在の大百姓の子であったが、容貌の美しさと利発さを信玄に見込まれ、十六歳で奥近習として武田家に仕えたという経歴をも持つ。
信玄は、若き日の弾正をことのほか寵愛した。二人はいわゆる、男色の関係にあった。十九歳の弾正に対し、二十五歳の信玄が浮気の弁明をしたためた誓紙が残っている。
──弥七郎にしきりに度々申し候えども、虫気の由候間、了簡なく候。全くわが偽りになく候……。
弥七郎なる美少年に、自分がたびたび言い寄っていたのは事実だが、腹が痛いと言うので最後の一線は越えていない。このことは、絶対に自分の作り話ではない──と、まあ、お話にもならないような、苦しい言いわけである。それだけ、信玄が弾正にぞっこんだったということであろう。
まあこの辺は大河ドラマでは一切触れられないのだろうな。
上杉謙信辞世の歌。
四十九年 一酔の夢
一期の栄華 一盃の酒
*1:「直江兼続」でgoogle画像検索すると、いろいろ見られます。