『天地人(下)』

天地人〈下〉
朝5時半にスッキリ起床。たっぷり1時間雨中の露天風呂につかり、マッサージ器で体をほぐす。部屋に戻ってもまだみんな熟睡中だったので、朝食まで『天地人』の下巻を読みふける。
新潟生まれの上司から「来年NHK大河ドラマでやるから」と貸された『天地人』だが、読み進めば読み進むほど、この作品の中での直江兼続という人の描かれ方が薄っぺらに見えてしょうがない。
兼続と主君・上杉景勝との会話。

「武士の義は、死ぬことだけが真の目的ではありますまい。死をも怖れず、いっさいの執着から離れた風のごとき境地に至ったとき、ひとすじのまっすぐな道が見えてくるのではございますまいか」
「それが、武士道か」
「さよう」
 兼続はうなずき、
「志に殉じて死ぬことも、ひとつの道です。しかし、あえて全身泥にまみれながら生をつらぬきとおすことも、また義の道」

“仁愛”の精神すなわち武士道、と大上段に構え、大義のための生を選ぶ主人公なのだが、割と引いて読んでいる私などには単なる日和見主義に見えてしまう。あるいは徹底したリアリスト?


この小説での兼続・景勝の描かれ方には全く感情移入できなかったが、この主従の関係性にはとても関心を引かれた。お家の舵取りを腹心に任せっきりの主君に、他国の群雄からも好かれた臣下。そこにはひとかけらの猜疑心も生じなかったのだろうか? なかったんだろうな。
そういえば直江兼続前田慶次郎a.k.a.花の慶次も惚れこんだ、「漢(おとこ)のなかの漢」として有名。そのくせ兜の前立てには「愛」の一文字を使ったり、そもそも上杉謙信の小姓として取り立てられた出自など、どこか同性愛的な匂いも漂わせている。
さてこの興味深いキャラクターを、来年の大河ドラマで妻夫木君がどう演じるのか…。