北方文化博物館

新潟市江南区にある「北方文化博物館」は、新潟地方に何家かある「農地解放まではムチャクチャ広い山野を保有していた豪農」*1のうちの一つ、「全盛期には、1市4郡60数ヶ町村に田畑1,370町歩(1,372ha)を所有」していたという伊藤家の邸宅を博物館として公開しているもの。


苔むした庭に落ちる大粒の椿の花。黒澤明の「椿三十郎」を思い出していたら、なんと実際に織田裕二主演のリメイク版「椿三十郎」の一場面でこの北方文化博物館の施設の一部がロケに使われたのだという。

なんだこれ?


 
 
広大な敷地内に、昔の農家の家を移築して展示していた。

昔の北陸地方の農家は、「板張りは奢侈である」という理由で、一軒につき2畳程度しか板張りの間を作ることが許されなかったそうだ。残りは全て土間。暖をとる術といえば囲炉裏くらい。想像を絶する寒さだったろうが、そんな中でこの「猫ちぐら」の主は、もしかして家の中で一番ぬくぬくとしていたのではないだろうか?

北国の冬は長い。秋の収穫期を終えた農耕馬は、一冬をずっと家続きの馬小屋で過ごしていたのだとか。排出される糞の量はかなりのものだったろう、ご覧のようにあらかじめ深い馬房に入れられていたそうだ。


 
「そうだ、京都へ行こう」の竜安寺的な風景。こちらは枯山水ではなく池泉のうるおいと苔の緑も豊かなお庭だけど。座敷わらしのように見えるのは愛息。
この大広間では、この5月に新潟で開かれるサミット労働相会議の開会式が開かれるのだとか。折しも、今日はサミット関係者(事務方の人たち)がこの北方文化博物館を訪れ、いろいろと視察をしているところが見られた。

トキの剥製が飾ってあった。もちろん天然記念物に指定される前のものだろうが、もうここまで来ると何でもありに思えてくる。

六代目当主の婚礼のときの献立表。端っこが見えないくらいズラッと料理の名前が並んでいる。明治25年5月に開かれたときのもので、婚礼は三日三晩にわたって行われたのだとか…。


私にとって最大のお目当てだった、茶室「三楽亭」。
 
こうして見ると普通の茶室のようだが…。
 なんと三角形の茶室なのだ。

畳も平行四辺形もしくは三角形なのが分かるだろうか?
この奇妙な茶室は、夭折した第6代(先々代)の当主が、他では見られないものを作ろうと自ら図面を引いて作らせたものだとか。書院や違い棚にまで平行四辺形や三角形を徹底的に取り込んだその設計から、腺病質の性格が垣間見えるようだ。

*1:他に3月21日の日記で紹介した渡邉家など。