「開放弦」

仕事が終わってから、渋谷のPARCO劇場へ。大倉孝二水野美紀らの出演で話題の「開放弦」という芝居を見てくる。

田舎の農家の青年たちでやっているバンドの曲が、ネット配信で爆発的に売れ始めた。だがその矢先に、作曲も担当するギターの青年・遠藤(丸山智己)が自動車に轢かれ、後遺症で右腕が動かなくなってしまう。自動車を運転していた漫画家夫婦(河原雅彦犬山犬子)は責任を感じ、青年の家に住み込みでお手伝いをする。ところが青年は、幼馴染・井沢(水野美紀)と偽装結婚をしており…。


タイトルの「開放弦」とは、弦楽器(この場合ギター)で左手で弦を押さえずに出す音階のことを言う。
ギタリストの夫が左手で弦を押さえ、右手の使えなくなった彼のかわりに妻がピックで弦を弾く。遠藤の文字通り右腕となった井沢だったが、ラストで本来ギターを弾けない井沢が遠藤不在のままギターを爪弾くとき、当然その音色は開放弦になるのだ。
本当に必要なときに愛する人が隣にいない…という喪失感を表した、よい場面だったと思う。


ただ、偽装結婚をしている妻・井沢のほうに、どうしても感情移入ができなかった。これは致命的。
水野美紀さんは、役柄の天然ぶりを見事に演じていてそれはそれでよかったのだが、これではみんなが天然オンナに振り回されているだけに思えてしまい、なにやらモヤモヤした後味。