『悲しみよこんにちは』

悲しみよこんにちは (新潮文庫)
まずは原作を読んでみました。昨年亡くなられた女流作家フランソワーズ・サガンの処女作。サガン18歳のときに著された小説で、その早熟な才能にフランス文壇は驚かされたとか。


17歳の少女セシルは、恋多き父と2人でパリに暮らしている。毎年やってくる避暑地の別荘に、今年は父親の恋人同伴でやってきた。そこへ、セシルの父親と亡き母の両方の古い友人であるアンヌが訪ねてくる。やがてセシルの父は恋人を捨ててアンヌと恋に落ち、バカンスが終わってパリに戻ったら結婚をするとセシルに告げる。
これまでの父との楽しい日々が終わり、アンヌに束縛されることを本能的に嫌ったセシルは、父の元恋人をそそのかして、父に浮気をさせるよう仕向ける…。


ちょっと日本語訳が古くて(というか直訳の羅列で)読みにくかったのですが、そもそものサガンの文体の片鱗は見受けられます。隠喩を繰り返し使う、幾重にも折り重なって意味を持っている文章。
そんな文章で表現されているのは、子供から大人に変わっていくセシルの、微妙な気持ちのうつろいです。そのあわいの中で、最後には悲劇を引き起こすような「嘘」をついたということでしょうか…。