『メディアと権力のカラクリ』
鳥取の図書館から借りてきた。660ページもある大部だが、「田原総一朗自選集4」のサブタイトルどおり、これまでに発表してきた文章を5つ、まとめたもの。
- テレビディレクター (1973年単行本 1982年文庫版)
当時東京12チャンネル(後のテレビ東京)のディレクターだった氏が1968年に制作した、少年院から出所直後の青年を追うドキュメンタリー番組。その制作現場の混乱を「小説的に」描いた作品。
- アメリカの虎の尾を踏んだ田中角栄 (『中央公論』1976年7月号掲載)
田中角栄の失脚は、アジア諸国と独自に手を結ぶ動きがアメリカの国家戦略にとって危険に映ったため、「アメリカに撃たれた」のではないか? という問題提起のレポート。
- 田原総一朗の戦うテレビ論 (単行本1997年)
「サンデープロジェクト」、「朝まで生テレビ!」などの誕生秘話から、ドキュメント番組の「やらせ」問題、TBSの「坂本弁護士インタビュー・テープ事件」まで…テレビにまつわる諸問題についてのエッセイ集。
「電通」の章が読みたくて本を借りたのだが、ほかにドキュメンタリー小説の「テレビディレクター」や、氏の初めてのテレビに関するエッセイ集という「戦うテレビ論」も面白く読んだ。
「テレビディレクター」を読んでいると、「理論は後からついてくる、とにかく当たって砕けてみよう!」という当時の氏のスタンスがにじみ出ている。落ちこぼれというよりむしろ「被差別者」の青年を追いかけようというのに、氏のスタンスはなかなか固まらない。そのためにドキュメントは半ば破綻をきたしてしまう。
そのため、後で書いた本作品の筆致が、どこか言い訳がましく感じられた。それは真摯な言い訳だが。
ちなみに、「電波少年」などのプロデューサー土屋敏男氏は、この作品を読んでテレビマンを目指した…と田原氏に話していたのだそうな。
「電通」を読んでいると、なんだか日本のあらゆる出来事は電通によって操作されているような気がしてくる(笑)。しかもそれが、「日本国家を共産主義から守るためだった」とか勘ぐりされている段になると、最早ちょっとした陰謀説だ(笑)*1。
*1:最新の「陰謀」LOHASについての、id:chaffさんのこんな興味深いエントリを見つけた。→http://d.hatena.ne.jp/chaff/20051106/p1