『貧困旅行記』

つげ義春・著。ISBN:4101328129
つげさんの宿や旅行についての趣味が如実に表れてて面白い。一般に観光地は嫌い、観光地化された大仰な旅館も嫌い、宿賃が高い旅館も嫌い。ちょっと裏ぶれた温泉や鉱泉町の、畳がボロくて傾いたりしている宿が好きなのです。
一人旅をするときはひどく唐突なのです。いきなり「蒸発してみたい」ってことで、小倉にいるという女性ファンを訪ねて、「そんなにブサイクでもないのなら、結婚しよう」とか押しかけて行ったり。そのくせ、途中に時間つぶしをした温泉町で、ストリップの姉さんとねんごろになってみたり(笑)。
また妻と子供と一緒にいろいろと出掛けているのですが、その辺の趣味や財布の中身との葛藤が細々と書かれていて微笑ましかったです。
でもここに書かれている風俗は、新しいものでも10年以上前の話。この本に書かれているような光景は、もう日本には残っていないのかもしれませんね。