『地下街の人びと』

地下街の人びと (新潮文庫)
半自伝的小説『路上(On The Road)』で有名なジャック・ケルアックの、こちらも半自伝的小説。ビートニク小説というのだろうか、意識があちこちに飛んだり、みんなでひたすら酒やドラッグをやっているだけのお話なんだけど、そうした行間に漂う、もう決して戻れないイノセントな時代への哀愁がミソなのだろう。

あざやかな輝きと希望に澄みきってはじまった夜。さあ、友だちに会いに行こう。さまざまなこと。電話のベル。出入りする人びと。コート。帽子。議論。明るいうわさ。大都会の興奮。ビールのまわし飲み。さらなるまわし飲み。研ぎ澄まされていく会話。高まる興奮。紅潮。まわし飲み。深夜。さらに時が経つと、紅潮した楽しげな顔も荒々しくなり、やがて足元のおぼつかない者が、“ダー・デイ・ウーバブ・バブ”などと言いながらタバコの灰を落とし、真夜中の酔っぱらいがバカな真似をするので、しまいにはバーテンダーがエリオッ卜の予言者のように、「閉店です」と言う――

それにしてもこういう文体は、しらふで読み通すのはかなり骨を折った。