『デジタル音楽の行方』

デジタル音楽の行方
音楽ソフトがレコード盤からCD、そしてデジタル配信へと移行してきた現在、「音楽は製品かサービスか?」という根源的な問いが音楽業界に突きつけられている。
もともと、レコード業界と音楽業界は同じものではない。それがより如実に見えるようになった現在、アーティストこそがブランドであり、エンターテイメント(ライブ)が最大の魅力となっている。つまり「音楽は製品ではなくエンターテイメント」なのだが、「言うまでもなく、ここが難しいところである。「製品としての音楽」の終焉は、我々が知るレコードレーベルの終焉を意味するのかもしれない。これこそ今日のゴタゴタそのものである」。
こうした産業構造の変化について、筆者は以下の9つのポイントを挙げている。

音楽を巡るマーケティングの変化

この中で最後の「ポルノ業界に学ぶ…」のくだりは興味深かった。つまり、どのようなメディアにおいても、常にポルノ業界が先駆者となって新たな産業構造を打ち立てているというのだが、これはビデオやインターネットの発達においても当てはまることだった。


そうは言っても、衰退していく産業構造を座して見ているわけにはいかない。
筆者は解決策として、「ユーティリティ・ライセンス」またはあらゆる音楽のダウンロードを認める税金のようなものを、ブランクメディア(空のCD-ROMなど)、MP3プレイヤー、DSL、無線などにかけることを提案している。これはつまりケーブルテレビのようにインフラに課金することで、音楽業界の収入を確保しようという発想である。水道会社や電力会社の事業モデルのような、と言い換えてもよい。

我々は、「体験のためにお金を払う」というのが、将来の音楽の価格設定にとってもっとも重要なパラダイムになると考える──それは「機械的複製」やCDの価格の固定化された価値からの完全な方向転換になる。

そう、音楽は私たちにとって文字通り水や空気のような存在であるならば、水のように課金するのが最もスムーズなのかもしれない。