『武蔵野』

武蔵野 (新潮文庫)
いわゆる武蔵野と呼ばれていた地域に長らく住んでいながら、国木田独歩の『武蔵野』をこれまで一度も読んだことがなかった。いや、そんな人がほとんどだとは思うけど、年末の忙しいさなかではあるがふと思い立って、青空文庫に落ちていた電子書籍をReaderに吸い上げて読んでみた。
文章の冒頭、「武蔵野の俤(おもかげ)は今わずかに入間郡に残れり」という一文が引用されている。独歩の『武蔵野』よりさらに昔、文政年間に書かれた文だそうだが、今となってはたとえ奥多摩まで行っても往時のおもかげはいくばくも残っていまい。なんせ独歩はこの作品を「渋谷村の茅屋」でまとめたというのだから…。
隔世の感に堪えない。