『TPP亡国論』

TPP亡国論 (集英社新書)
経済産業省に所属(この本を書いた時点では京都大学、現在は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構に出向)している現役官僚によるTPPの解説本…というか「なぜTPPは日本にとって害をなすのか」を説明した本。
筆者いわく、菅首相(当時)が唐突に所信表明演説でTPPに触れ、その後の横浜APECにかけたと思われる「開国」の表現とともに参加検討を宣言したのだが、それは明治期の「開国」とは似ても似つかぬ「亡国」の始まりになりかねない、という。
その理由は、国際間の資本の自由な…というより無規制な移動を許すと、アメリカや中国の経済政策に巻き込まれ、さらには新興国の富を集めるどころか逆に奪われる結果にしかならないと予測するからだ。また、貿易が自由化され拡大すれば、物の値段も賃金も下がり、よりデフレが悪化してしまうともいう。


こうした筆者の予測はそれなりの説得力を持っているように感じるし、問題の解決策として「グローバル経済下では企業の利害と国民の利害は一致しない、内需拡大でデフレ克服を…」というのも分かるのだが、もし製造業の工場がすべて国外に出て行ったしまったらどうするのだろう? 円高のためでもあるが、実際にそうした動きは起きている。また「少子高齢化は需要過多だから仕事は必ず生まれる」というが、人に加えて商品や資本などの供給力までますますなくなっていくのではないだろうか?