「おおかみこどもの雨と雪」

おおかみこどもの雨と雪 (角川文庫)
「母が好きになった人は、おおかみ男でした」
いきなりそういう設定で始まる物語だけに、どこまでが現実でどこからがメルヘンなのかあいまいなのだが、細かい描写や演出が凝っていて感心した。
おおかみ男(この人、作中ではハッキリとは名前が出てこない)が恋人のハナに「実は…」と真実を打ち明けようとする場面では横を通る車のヘッドライトが二人を照らしたり、ハナが引っ越した田舎では小さな羽虫が飛んでいたり…。
病弱な雨くんはミルクをなかなか飲まなかったり、食べたものを嘔吐してしまったり、子を持つ親として「あるある」という場面も多く、一人で育児をしようと決心するハナには同情もしたが、逆にそれだからこそ納得いかない結末だった。結局あれは母性よりも父性を選んだってことなの?