「動かない蟻」

シティボーイズの公演「動かない蟻」を見てきた。今回は辺見えみり荒川良々中村有志がゲスト。
切り落とされた耳、その上でうごめく蟻…のっけからデビッド・リンチの「ブルー・ベルベット」のオープニングを連想させる幕開けではあったが、それとはあまり関係なく、大竹まこと、きたろう、斉木しげるによる時には冴えた時には誰も絡んでこないボケの数々が繰り広げられていく、まあいつものシティボーイズ節。
さまざまなコントの断章のなかで、最も印象に残ったのは、オランウータンに育てられた人間(きたろう)と人間に育てられたオランウータン荒川良々)の話。最初は爆笑を誘うも、途中から「果たしてこれは笑っていいのだろうか?」とためらってしまう荒川良々が「紙一重」の怪演。賢い動物とバカな人間の対比は、ある意味深遠なテーマではあった。
それとは対照的に、「コスモの次郎長」こと「巨大なホモ」が「巨大なマゾヒストを後ろから抱きしめ」る一幕は、福島の原発事故を風刺しつつも下劣炸裂でやや引いた。
何となくではあるが、コント全体に通底するのは「遠隔操作」というメタファーかと感じた。