『“35歳”を救え〜なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか』

“35歳”を救え なぜ10年前の35歳より年収が200万円も低いのか
昨年のゴールデンウィークに放送されたNHKスペシャル「“35歳”を救え〜あすの日本・未来からの提言」を元に、番組作りの基礎となったアンケートデータや、その後の追跡調査、海外取材などを増補して編集された本。番組内容とその「提言」は上記リンク先に簡潔にまとめられているので、ぜひ一読してもらいたい。
私は今年35歳になる。昨年のNHKスペシャルも何となく見てしまった。あと、この本の編集に友人が携わったという縁もあって、本書を手に取った次第。


本のタイトルにもなっているように、10年前の同年代との比較で平均年収が200万円も減っているという調査結果*1となった35歳世代…団塊ジュニア世代の雇用問題が、そのまま日本の将来に大きく垂れ込める暗雲となる可能性があるという。収入だけの問題ではなく、少子化問題とあいまって、日本社会の構造が破綻をきたすシミュレーション結果が導かれるというのだ。
番組の構成も本書の構成もほぼ同一で、前段では収入が減って「悲惨」と言ってもいいくらい八方塞の状況になってしまった団塊ジュニアのインタビューが、何例も提示される。個人的に読んでいて暗い気持ちになったのは、壁に貼ってある屈託ない笑顔の家族写真を見ながら「あれが最後の家族旅行です。あれ以来年収が激減して、貯金も取り崩してしまったし、もう二度とみんなで旅行なんてできないでしょうね…」とコメントしたという男性のエピソード。自分もつい最近家族旅行に行ったところだったので、余計身にしみた。
こうした現状を受け、後段でその要因は「経済不況」「雇用のセーフティネットの崩壊」「人材ニーズのミスマッチ」にあると分析し、解決策はとして以下のような「提言」がなされる。すなわち、(1)「積極的雇用政策」、(2)「生活支援」、(3)「家庭と両立する働き方」の3つである。


しかし番組を見ていたときも本書を読んだ後も、前段と後段の論が、何と言うか生々しさのレベルが違いすぎて、ちょっと同じ地平上での話に聞こえない、つまり後段が白々しく思えてしまう…という問題点を感じた。
もちろん、後段の提言を導くために、イギリスの雇用対策やフランスの家庭事情など、先行施策が実例を挙げながら紹介されているのだけれど、それが日本で実際に導入されて、前段でインタビューを受けていた35歳世代の生活が上向くというイメージが、全く持てないのだ。


ちなみに本書の後半3分の1ページほどは、全国1万人の35歳からサンプルを集めたという分厚いアンケート結果が、注釈なしにそのまま提示されている。自分が同世代のどの部分に相当するのか…いちいち確かめながら見ていると、興味深くもあり、暗い気持ちになるところもあり…。

*1:「30〜34歳の男性の年間所得を分布で表した図で見ると1997年には、500〜600万円台が最も多かったのですが、2007年には、それが300万円台になっています。」