君は“熊坂長範”を知っているか?

吉川英治の「新・平家物語」の第四巻を読んでいて、鞍馬山を脱出した遮那王(しゃなおう)こと源義経が、東国へ逃げる道中に熊坂長範(ながさか・ちょうはん)を名乗る盗賊(本当は金売り吉次の手下)に襲われる…という場面が出てきた。
ここを読んだ時、「盗賊」「熊坂」というキーワードが遠い昔にどこかで見たことがあるような気がして、しかしそれがどこだったか分からず、奥歯に物の挟まった感じがここ数日続いていた。


熊坂長範なる人物は吉川英治の創作ではなく、民間に多くの伝承のある大盗賊で、義経を襲って返り討ちにあうこの一幕は能や歌舞伎の演目にもなっているほどだというが、そんな高尚な記憶でないことは確かだった。
記憶をたどるうちに、子供の時にマンガで読んだような気がして、それを頼りにあれこれググってみたところ、ようやく正解にたどりついた。

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忍法を広めようと、ハットリくん一家が「忍者学校」を開校することに! 仲間の忍者に講師をお願いして、生徒もたくさん集まった。その中でも、三匹流クラスに入学した熊坂さんは、ものすごく熱心な生徒だったのだが…!?

これです、これ。
忍者ハットリくんの一エピソードで、ハットリくんのお父さん(ジンゾウ)が「忍者学校」を開くのだけれど、ハットリくんはじめ講師陣が自分の生徒の優秀さを競う中で、ハットリくんの幼馴染「三匹の忍者」たちのクラスに入った優秀な生徒の名前が「熊坂長太」だった。登場が一回こっきりのキャラの割に、随分変わった名前をしているなあ…と、子供心に引っ掛かっていたのを思い出した。
確かこのエピソードのオチは、この非常に熱心な生徒・熊坂さんは、実は泥棒で、忍者学校で学んだノウハウを使って窃盗を働き警察に捕まる…というものだった。なるほど、こんな由来のあるネーミングだったのか。30年ぶりくらいに謎が解けた。
蛇足ながら、熊坂さんに忍術を教えた「三匹の忍者」の名前は、猿飛猿助、雲隠才蔵、石川五助。もちろん、猿飛佐助、霧隠才蔵石川五右衛門のパロディである。…っつってもいまの若い人には元ネタが何か分かんないだろうから、ほとんどピンとこないだろうけど。