木村茶道美術館

柏崎市にある「木村茶道美術館」をおとなう。かつての豪農の家・木村家の39代目当主重義氏の蒐集作品および市内の篤志家の寄付によるコレクションを集めた、小ぢんまりとした茶室兼美術館である。
ここの最大の魅力は、何と言っても展示品を実際に使用した茶席である。本物の楽茶碗や人間国宝の手による茶碗でお茶がいただけると聞き、おっかなびっくり覗きに行ったというわけ。
 
色付きはじめていた庭。高低差や木の種類で、長い期間に渡って紅葉が楽しめるように作庭されているのだという。
美術館の受付で茶席付きの入場券を購入。幼い子連れだったので私一人で茶室に入ろうと思っていたら、「いま他に誰もお客様がいらっしゃらないから、お子さんもどうぞお茶を飲んでいって下さって結構ですよ」とのこと。お言葉に甘えて愛娘を連れて3人で茶室に入らせていただいた。
紅葉を模した練り切り菓子をまるかじりする愛娘。作法もへったくれもない。そういう私も懐紙すら持ち合わせていなかったが。私はぽってりとした釉薬垂れも福福しい白い萩の茶碗(十一代三輪休雪)で、つれあいは楽家の現在の当主(十五代)の手による底の深い楽茶碗で、それぞれ薄茶をご馳走になる。愛娘は白湯を。
美術館を創設した木村重義氏は江戸千家で学んだということだったが、今日の釜も江戸千家のものだったのだろうか。浅学にして不明。ただ、亭主を務められた美術館の方が非常に親切で(暇を持て余していたのかも?)、道具組みを丁寧に説明していただいたのがありがたかった。香炉、風炉先、釜…道具のどれをとっても人間国宝文化財級のものを揃えてあったのには驚いた。菓子の器も魯山人だった。ちなみに軸は福沢諭吉の書(旅行先の善光寺から知人に宛てた手紙)だったが、「汽車」という文字が可愛らしかった。