『佐藤可士和の超整理術』

佐藤可士和の超整理術
今年の春頃に私の中で「整理ブーム」が沸き起こったことがあって、様々な「整理術」関連本を読み漁ったり、そこに書いてあったことを実践してみたりして、現在は何となく私に合ったスタイルの「整理術」が確立できた感じがしている。
それは一言で表すと、「不要なものをなるべく捨てて、残すものはなるべく同じ規格に落とし込んで見つけやすくする」ということ。山根一眞方式や野口悠紀雄方式など、各種整理法の美味しいとこ取りみたいなものである(彼ら以降の整理本も実は同様に「美味しいとこ取り」が多い)。
ところで、最近の「整理」関連の話題を眼にする時にかなりの頻度で引用されていたのが、佐藤可士和氏の仕事のやり方である。一度原典にも当たっておこうと思い、さらりと読んでみた。


佐藤方式も基本線は「不要なものをなるべく捨てて、残すものはなるべく同じ規格に落とし込んで見つけやすくする」ということで、彼のオフィスの写真が紹介されているのだが見事なほどに「何もない」机が「何もない」空間に並んでいる様は、まるでオフィス家具のショールームのようだった。しかしもちろん本当に「何もない」のではなく、必要なものはすぐに取り出せるように分類され収納されているのだ。
彼はこのやり方を、単に整理整頓そのものを「目的」でやっているのではなく、あくまで思考の整理をして新たなアイデアを生み出すための「手段」として編み出したと書いている。
情報や思考の整理からアイデアが生み出される過程の実例として、キリンの「極生」や国立新美術館のロゴ考案、ユニクロのNY旗艦店のアートディレクションなど、彼の数々の仕事が紹介されていた。ひとつひとつのエピソードは「なるほど」と思わされるのだがこれらはあくまで成功例に過ぎないので、いざ読者がそれを自分の仕事に移し変えて実践できるところがあるとすれば、情報や思考を整理することによって仕事相手(クライアント、ユーザー、上司…等々)への説得力が増す、という点だろうか。
つまり、何が言いたいのか自分でも分からないままに(整理がつかないままに)話をしていると全く説得力が感じられないという、ごくシンプルなことがキモなのだと思う。