リアルらしさ

年上の女性と飲む機会があった。
NHK大河ドラマ篤姫」が好きだというその女性に、あのドラマはものすごく人気があるようだけれど、実際どこが面白いのか教えてほしいと尋ねたところ、「封建社会の中では立場が弱かったであろう女性(=篤姫)が、男社会や大奥のしがらみに屈することなく、なおかつ目下のものにも思いやりを持ちつつ、困難な状況に立ち向かっていく様子が痛快」との答えだった。
「それでは篤姫はいいところばかりで面白みがないですね」と言ったところ、「いや、いじめを受けるし、思いやりのつもりでやったことが相手のプライドを傷付けたりして、そういう失敗を重ねて成長していく話なのよ」と。
しかし私は、「思いやりも自分の意思を貫くのも結構ですけど、その代わり篤姫はものすごく足がくさいとか、金箔入りの食べ物しか食べないとか、そういう欠点は出てこないのですか?」とまぜっかえした。「美談ばかりでなく、何かしら悪いところが見えない人のお話なんて、ぼくは信じられないなあ」
するとその女性いわく、「そういうドロドロした話は、現実世界で充分過ぎるほど味わっているから、せめてドラマの中だけでも美談に浸りたいのじゃないかしら」と。
それはどうなんだろうか? 私はそれは、絵に描いた餅に過ぎないと思うのだけど。もっとも、世の中には絵に描いた餅がまさに見たいという人もいるのだろう。