『一億人の俳句入門』

一億人の俳句入門
NHK教育で日曜の朝にやっている「NHK俳句」という番組があって、私はそれをここ数年ずーっと見ていたのだけれど、今年の1月から講師陣が一新されて以来すっかり見なくなってしまった。前の講師陣が好きだったので。
ただ新しい講師陣の中でも1人だけ好きな人がいて、それが本書の作者である長谷川櫂氏。おしゃれでスマートな外見に、理論的な俳句評が光るダンディ。
この本を読んで、初めて俳句には「一物仕立て」と「取り合わせ」という2つの種別があることや、どうして無季の俳句というものが存在するのかを知った。恥ずかしながら、これまでは直感的に味わうばかりで、そんなふうに俳句を分析して考えてみたこともなかったな〜。
それでいて本書は、あまたある俳句の入門書のように、堅苦しい俳句の歴史や作法などを順を追って解説するような回り道はせずに、筆者の俳句観において肝要なポイントを重点的に説明しているため、心に届く入門書となっている。

 切字には心の世界のできごとを表す特別の働きがある。このため、どこにでも使えるというものではない。やたら切字を使う人がいるが、あれは子どもが真剣とも知らずに刀を振り回しているようなものだ。

 季語と切れは車の両輪。季語は切れによって香り立つ。切れは季語を切るとき、もっとも切れ味がいい。

明快だな。