『へうげもの』

へうげもの(4) (モーニング KC)へうげもの(3) (モーニング KC)へうげもの(2) (モーニング KC)へうげもの(1) (モーニング KC)
モーニングにて連載中のマンガ。最初のほうを読んだことがなかったので、この際単行本で一気読み。
へうげもの」というのは旧仮名遣いなので「ひょうげもの」と発音します。漢字で書くと「剽軽者」で、つまり「ひょうきんもの」という意味。主人公の古田織部が、慶長四(1599)年の利休の命日に開いた茶会で、利休の美意識とは大きく外れた形のゆがんだ茶碗を使ったのを見て、驚いた当時の人々はこれを「ヘウゲモノ茶碗」と呼んだそうです。
主人公の古田織部は、斎藤道三織田信長豊臣秀吉徳川家康…と仕えた生え抜きの戦国武将でありながら、後に千利休についで天下一の茶の湯宗匠となった人物。それまで町人のものだった茶の湯の文化を、初めて武士(大名)の文化にした人です。
作者の山田芳裕氏は史実に様々な脚色を加えながら、古田織部を「武と美の間で揺れる数寄者」として魅力的な人物に描き上げています。これは「出世か自分の信念か」で悩むアイデンティティの問題とも言い換えられ、時代を超えて現代に響いてくるテーマだと思います。
しかしそれ以上に物語の前半を読んでみて楽しかったのは、「みやび(動)」と「わび(静)」という対極にある日本の美意識を軸に歴史を読み解き直した、独特の史観です。明智光秀の謀反は「みやび(信長)」に対する「わび(光秀)」の反乱だった…という視点は、とても斬新に思いました。この流れで見ていけば、信長からその野望とともに「みやび」を受け継いだ秀吉と、「わび」の発見者である利休が反目せざるを得ないのは必然。なかなか巧いプロット。
最終的には大阪夏の陣の後で「秀吉方に通じていた」として家康に切腹を命じられた古織。マンガ上でこの後どのように歴史に関わっていくのか、連載が見逃せません*1

*1:いまはちょうど秀吉の大茶会のくだり。今週号で出てきた古田織部の茶室には仰天&爆笑!