「グエムル 漢江の怪物」

グエムル-漢江の怪物- スタンダード・エディション [DVD]
前々から気になっていたのを、ようやくDVDで見た。
CMなどの印象からサスペンス映画だと思っていたら、これは家族もののコメディだったのか…。冒頭で科学者がホルムアルデヒドを漢江に垂れ流して廃棄するところから、全編を通して「それはないだろう」の連発。公害が怪物になって人間に返ってくる…というプロットは、最初期のゴジラと同じだな。
でもゴジラなんかと違うところは、怪獣が出てくると普通は国家権力が出動してくる話になるのに、本作はひたすら「さらわれた妹/娘を救い出したい」という家族の私情で貫かれているところ。主人公たちは最後まで警察や軍隊の力を借りずに、結局家族の力だけで妹を救い出し怪物を退治してしまう。それに対して警察や軍といった本来頼るべき権力サイドは、必要以上に無能な存在として描かれている。
肩の力を抜いて見ればいいと分かり、そこからはひたすら役者の表情を追った。目の前に実在しない怪物を前にした迫真の演技。でもまあ一歩引いて見れば、それが逆に滑稽だったりするのだが。


ラストで、主人公が怪物を退治した後もまだ漢江のほとりに住んでいて、時折川のほうに何かの気配を察して銃を構える…という場面があった。あんなことがあったんだから引っ越せばいいのに…というツッコミはともかく、これはやはり亡き父のお店を継いで頑張っているということと、そうやって怯えながらも生きていくしかないということを表しているようで、最後の最後まで庶民目線のお話だと思った。