「パッチギ!」

パッチギ! (特別価格版) [DVD]
先週テレビでやっていたのを、一週遅れで。
井筒監督の映画では「のど自慢」が好きで、あれは一種のミュージカル映画だと思っているのだが、あのあたりから「歌が持つ力」を援用した作品作りになってきていると思う。本作でもザ・フォーク・クルセダーズの「イムジン河」や「悲しくてやりきれない」、「あの素晴らしい愛をもう一度」といった曲が効果的に(というかストーリーと切っても切り離せないくらい親密に)使用されている。
「ケンカと歌」という2大パトスで見せた。


主人公が「イムジン河」をラジオ番組の生中継で歌うとき、局の偉い人が「これは放送禁止歌なんだよ!」と血相を変えるシーンがあった。放送禁止歌については、そのものずばり『放送禁止歌』という本を読んだことがあって*1、そこにも「イムジン河」の話が載っていた。あの本によれば、厳密に言うと「放送されてはいけない歌」というものは無くて、結局マスコミの事なかれ主義による自主規制なのだということだった。
摩擦を怖れるあまりの自主規制──何やらこの映画のテーマにも響いてくるところがありそうだ。


はてな」でこの映画の感想をつらつらと見てみたが、意外と皆さんナイーブというか、「ケンカのシーンが多すぎ」「暴力や汚い言葉が多い」といった記述がかなり見られて、ちょっと驚いた。
確かにテレビの地上波ではあまり見ないかもしれないけど、このレベルの表現なんてまだキレイにまとめられてたほうで、世の中には(ホラー映画とかではなくても)もっと残虐な描写をする映画もあるし、もっと言ったら現実世界で起きている戦争とかケンカとかのほうがよっぽど生々しくて残虐だと思う。みんな取っ組み合い・殴り合いのケンカをしたことがないのかなぁ…。
はてな」を書いている人の年齢層とかは分からないが、この反応は私には割とショックだった。


関西独特の言い回しで、ケンカでやられたときなんかに「まだいけるか〜?」という表現、好きだな。深刻なはずなんだけど、前向きな明るさがあるから。