『全真相 坂本弁護士一家拉致・殺害事件』
夕方に図書館へぶらりと行って、何気なく手にとった本。数ページ目を通したら止まらなくなり、そのまま借りて帰った。
- 作者: 江川紹子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1997/04
- メディア: ペーパーバック
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もちろんこの事件のことは報道等で知ってはいたが、龍彦ちゃんは亡くなった当時1歳2ヶ月だったということで、本書を読みながら同じような年頃の自分の息子と重ねて、思わず落涙してしまった。
殺害されて長野県の山中に埋められた龍彦ちゃんは、実にその5年10ヶ月後の1995年9月10日、別の場所に埋められていた両親の遺体発見から遅れること4日後に発見された。元気ならばこの年の4月に小学校一年生になっているはずだった。
何の糸口も見出されないまま長期化の様相を見せる事件を、世間から風化させまいと「坂本弁護士と家族を救う全国弁護士の会」はさまざまな活動を行った。
そんな活動のひとつの集会で、ゲストに招かれた森村誠一氏が寄せたコメント。
大切なのは、怖いけれども黙らないことです。そして絶望しないことだと思います。そして、事件を風化させない。何年たっても風化させてはならないと思います。このことが、暴力による言論、正当な義務の弾圧・妨害事件を再び起こさせないようにする一番有効な方法だと思います。
自著について右翼からすさまじい攻撃を受けたという実体験に基づいた、森村氏の言葉は重い。
事件のことがもうあまりマスコミでも取り上げられなくなっていた1993年、「全国弁護士の会」のメンバーは坂本弁護士や都子さんの親たちとともに全国を車で回るキャラバンを決行した。
その発案者で中心的役割を務めた弁護士の小島周一氏(坂本弁護士と同じ事務所の先輩)は、キャラバンを振り返っての感想をこんなふうに述べている。
…マスコミが最初に風化するんだな、という感じ。そして、マスコミが後退すれば、当然のように市民もそうなる、と思っていたけれど、決してそうじゃない。南雲弁護士が、総括会議の時に、『結局キャラバンの主役は弁護士ではなく市民だった』と言っていたけれど、ホントにそう思う。