『マイルス・デイビス自叙伝(1)』

マイルス・デイビス自叙伝〈1〉 (宝島社文庫)
今日から読み始めた。そのクールでヒップな語り口に、すでにやられている。
マイルスがセントルイスからニューヨークに出てきて、チャーリー・パーカーと一緒にクラブで演奏を始めた頃のこと。当時通っていたジュリアード音楽院を辞めようと決意、そのことを故郷で歯医者をやっている父親に伝えにいったときの会話。

「ダッド、ニューヨークでは何かが起きてるんだ。今、音楽もスタイルも変化していて、バード*1やディズ*2と一緒に、オレもそのムーブメント*3に加わっていきたいんだ。だから、白人一辺倒で、興味のあることを何も教えてくれないジュリアードを辞めるってことを伝えに帰ってきたんだ」
「わかった。自分のやっていることがわかってるんなら、かまわないさ。でも何をするにしろ、しっかりやれ」
 おやじは、続けて、オレが決して忘れられないことを言った。
「マイルス、窓の外の鳥の鳴き声が聞こえるか? 自分の鳴き声がないモッキンバードさ。他の鳥の鳴き声は何でも真似るが、自分の鳴き声がないんだ。あんなふうになるなよ。自分だけのサウンドを身に付けることが一番大事なんだぞ。自分自身に正直にな。やるべきことはわかってるんだろうし、お前の決心を信じるよ。金は独り立ちするまで送ってやる、心配するな」
 おやじはそれだけ言うと、患者のところへ戻っていった。最高に恰好よかった。…

…私もこんな親父になりたい。と思った。

*1:チャーリー・パーカーの愛称

*2:ジャズ・トランペッターのディジー・ガレスピーのこと。チャーリー・パーカーとともに、ビバップの創始者的存在。

*3:当時勃興し始めていたBe Bopのこと。