『日はまた昇る』

日はまた昇る (新潮文庫)
時差ボケのお供に読了。思った以上に面白かった。
パリでの爛熟した生活、スペインの自然の中での釣行、同じくスペインのフィエスタ(闘牛祭り)という土俗的祭典…。異国情緒、自堕落な若者文化。興味深い要素が満載。これで面白くならないはずがない。


今年の初めに、朝日新聞で「ロスト・ジェネレーション」という表題で、20代後半から30代半ばまでの世代をひとくくりにした世代論特集をやっていた。このくくりで言うと、私はまさにそのど真ん中にあたる年齢なので、ちょっと興味深く読んでいた。
この「ロスト・ジェネレーション」という言葉の出典は、本書『日はまた昇る』の冒頭でヘミングウェイが献辞をささげているガートルード・スタイン女史が、第一次世界大戦後にパリでダラダラしていたヘミングウェイら米国人の若者たちに投げかけた「あなたたちはlost generationね」という言葉であり、その後ヘミングウェイフィッツジェラルドら一群の作家を呼ぶ言葉として文学史上位置付けられたのは、ご案内のとおり。
従来の日本語訳では「失われた世代」とされていたロスト・ジェネレーションという言葉だが、私が今回読んだ高見浩訳では「自堕落な世代」と翻訳されていて、訳者自身により「そのほうが本来の意味に忠実だ」という趣旨の解説が付けられている。
朝日新聞は「(バブルの崩壊と一連の構造改革により)失われた世代」という意味で使っていたのは、言うまでもない。


高見浩氏といえば、私が大好きなアメリカの作家エルモア・レナードの一連の著作群の翻訳者でもある。
ラム・パンチ (角川文庫)アウト・オブ・サイト (角川文庫)
エルモア・レナードの軽妙な文章を、本来の風味を崩さずに日本語に置き換える訳者として、私がとても信頼している訳者だった。
ヘミングウェイの名作を高見氏の訳で読めて、大変幸せだったと思った。