『アタシと私』

アタシと私 (幻冬舎文庫)
ブクオフ105円。
1997年の年頭に、中山美穂さんは1ヶ月間L.A.で休暇を取ったそうだ。そのときに、ワープロの前に座ったらほとばしるように流れ出てきたという文章が、この作品なのだとか。小説でもない、詩でもない、長編の童話といった感じ。


歌手をやっている女性「アタシ」と、元ベース奏者でワインのコルク収集が趣味の男性「私」の、交互に挿入されるモノローグで物語は始まる。
…というかこのモノローグ部分は、夢の世界と現実の世界が入り混じっていることもあって、最初は正直言って「なんだこの戯言の羅列は…」と投げ出しそうになってしまった。
何とか我慢してモノローグを読み進めると、いつしか場面が交錯し、気が付くと2人はニューヨークの街角で出会っており、すぐに恋に落ちる。この辺、もうちょっと深みを持たせてもよかったと思う。ご都合主義の感が否めない。
そして最後、実は神様に選ばれた天使だった2人(!)は、クリスマスの街角で再び出会い、抱擁する。
ま、作者ご本人もあとがきで書いておられるとおり、おとぎ話ですな。


この作品はそもそも、スタンダードナンバー「STARDUST」にインスパイアされて生まれたものだとか。この曲は1929年に作られ、以来さまざまなシンガーたちがカバーしている。作中ではダイナ・ワシントンのカバーが取り上げられている。
ということで参考まで、ナット・キング・コールの歌う「STARDUST」はこちら。このクリップは、昨年日本でも公開された映画「Dear フランキー」のシーンをつないだもののようです。