『俳句の世界 発生から現代まで』

俳句の世界 (講談社学術文庫)
「第一部 俳諧の時代」に続き、「第二部 俳句の時代」も読み終えた。
第一部では冴え渡っていた小西甚一氏の筆致なのだが、第二部に入ってからは、とくに後半の現代句についての記述は、ごく僅かだが舌鋒が鈍る印象を受けた。同時代を批評する難しさを含め、現象の中にいながらにしてそれを客観することの難しさが、見え隠れしているのだろう。
小西氏自身も俳句詠みの一人である。巻末に自身の句を掲げたところなどは、どう受け取ってよいものやら…。


ところでこの本のすごいところは、「歴史的仮名遣ひ」も「現代仮名遣い」も使われていないこと。つまり筆者は、どちらの表記でも同じになるように仮名(主に送り仮名や用言)を選び抜いて、文庫本で400ページ弱にもなる大部を書き上げているのだ。
これは小西氏がこの本を著す少し前に、歴史的仮名遣いで論文を出版したところ、本人に何の断りも無く編集者が現代仮名遣いに書き換えて発行してしまったため、怒りを転化して試みはじめたものだという。