『サービスの達人たち』

サービスの達人たち―ヘップバーンを虜にした靴磨きからロールスロイスのセールスマンまで (新潮OH!文庫)
野地秩嘉・著。札幌ボード旅行の行き帰り、飛行機の中で読んだ。
野地秩嘉さんといえば、以前読んだ『キャンティ物語』*1の著者。その人が、いろいろなサービス業の達人たちについてレポートした本があると知って、購入してみたのだが…。正直、あまりインスパイアされるような本ではなかった。
それぞれの分野の達人を掘り下げている、というよりは、達人について筆者が知っていることを書いている、という感じ。達人たち自体は凄いのだが、やや散漫に感じた。
どこかに連載したものではなく、あちこちに書いた文章や書下ろしを寄せ集めた本だ、というのも無関係ではないだろう。


一つ面白く感じたエピソードは、電報を配達する人たちの話。
その昔、まだ電話の普及率も低く電報が全盛期だった頃、電報を配達する郵便局員は自転車で町中を駆け回っていた。「公道最速」を誇る彼らを見ると、蕎麦屋の出前持ちや通勤途中のサラリーマンなどで脚力に自信のある者たちが、「勝負」を仕掛けてくることもあったそうだ。無論、「プロ」である郵便局員が負けることは許されない。旗色が悪いときは、わざと角を曲がったりして勝負を避けたとか。
また、そんなスピード自慢の局員どうしで、年に一度後楽園競輪場(当時)を借り切って競輪大会を開いていたのだとか!