「男たちの大和/YAMATO」

太平洋戦争末期、年少兵として“不沈艦”大和の乗組員となった神尾克己。レイテ沖海戦を潜り抜けたのも束の間、大和は沖縄決戦へ向けて玉砕覚悟の出撃を命ぜられる。神尾は大和撃沈から生還したが、初恋の相手は広島で被爆し死んでしまう。
それから60年。鹿児島の枕崎で漁師となっていた神尾のもとに、内田という女性が現れる。彼女は神尾が大和に乗っていたときに世話になった上官の養子で、「大和の沈没した海域に連れて行って欲しい」と懇願する。

完全に大和中心に太平洋戦争を切り取った作品なので、まあしょうがないといえばしょうがないのだが、どこか一面的に過ぎる当時の描写。社会情勢などはバッサリ切り捨ててあり、少し物足りなく思った。…まあ、「男たちの」だからそれでよいのかもしれないが。
巨大セットを組んで再現した大和の船上場面や戦闘のシーンなどは、とても迫力があった。いっそ、淡々と救いの無い戦闘だけを描いて2時間半を終えたらよかったかも。それを見てどう思うかは観客に委ねて。
そういう意味で、現代のパートが蛇足に思えた。浮き袋も着けないで漁船で沖合いに出る…という無理な設定にも鼻白んだが、ラストで年老いた神尾(戦中派)と内田(戦後派)と15歳の少年(現代・未来)の3世代が、海に向かって敬礼する場面、あれは見ていて悪寒が走った。押し付けがましいと思う。


あと、とある雑誌で角川春樹さんのインタビューを読んでいたのだが、そこで「静岡の刑務所を出てから東京に戻ってくるまでの間に、立て続けに電話をして10本ほどの仕事の契約を結んだよ」などと嘯いていた氏の姿が、映画を見ている間ずっとチラついて、落ち着かなかった。
負傷した内田(中村獅童)を森脇(反町隆史)が見舞う場面で、森脇が窓の外を見ながらつぶやいた「散る桜 残る桜も 散る桜」というフレーズは、良寛の句。この辺に、自身でも俳句を詠み、獄中でも詠んでいたほどの角川春樹さんの色が、見え隠れ…。


関係ないけど鈴木京香さんって、アゴが割れてますね。神尾の初恋の相手を演じた蒼井優さんが、すばらしく可愛く見えました。