『江戸そば一筋〜並木藪蕎麦そば遺文』

堀田平七郎・著。ISBN:4388352004
並木も池之端も神田も、「藪」って行ったことないんですよ、実は。ただその名前だけはつとに有名ですね。
で、実はこの藪蕎麦の堀田平七郎さん(平成4年に逝去)も、「美味しんぼ」に実名で出てきてるんですよ!*1 山岡や栗田に連れられてきた若い蕎麦職人に、堀田氏が直々に並木藪蕎麦のそばつゆの製法を教える、というお話なのですが。
堀田さんはその父・勝三氏(「並木」の初代)の美学を忠実に受け継ぎ、さらには並木藪の蕎麦製法をおしげもなく他の店に教え、江戸蕎麦の普及と発展に尽力された方のようです。何かというと「秘伝」とか「門外不出」とか言いたがる某ラーメン業界の人にでも、ぜひ聞かせたい話ですね。
感心したのは、その蕎麦に対する凛とした姿勢ですね。一貫してます。蕎麦粉はもちろんのこと、つゆの元である鰹節や醤油、さらには種物の具に至るまでの材料の吟味。経験に裏打ちされた優れた技術。あくまで清潔に保つ店内。そして全ての人に喜んでもらえることを目指す客あしらい。
いわゆる名店の驕りではなく、あくまで蕎麦本意・客本意の姿勢に、学ぶところが多かったです。たかが蕎麦屋、とあなどることなかれ。

*1:美味しんぼ」第2巻・そばツユの深み