『わが酒の賛歌』


昨年末に訃報が届いた、知の巨人コリン・ウィルソンの著作。『アウトサイダー』や『オカルト』など、B級ニュース的な方面に強い印象のある著者だが、酒に関する著作もあると聞いたことがあって、図書館で探してかりてきた(本書は現在は絶版)。
もともとビール党だった筆者だが、体重の増加(!)とちゃんぽんによる二日酔い問題を解決すべく、ある時期からワイン一辺倒になったと告白している。また、人類と酒との歴史を掘り下げてみてもその始まりは醸造酒であり、なかんづくワイン(の原形)は最も古い酒のひとつであるとして、本書の大部分のページもワインの歴史に割かれている。
ただ、古今東西の史料を渉猟しワインや酒について語るなかで、最後にはこんなことも書いていたのが印象に残った(ちなみに英国ではブルゴーニュ産をバーガンディ、ボルドー産をクラレットと呼ぶらしい)。

ワインを知るうえで大事な点は、知られていないクラレットを言い当てるということではなく、実際飲んでいるワインについて何かを知ることだ。何かを捜し求め、何かを期待することだ。