ミュシャ展

つれあいと2人、六本木ヒルズでやっている「ミュシャ展〜パリの夢 モラヴィアの祈り」を見てきた。
私は昔からこの人の絵が好きで、会社に入りたての新人の頃、新宿ルミネのアートスペースでミュシャ展をやっていると聞いて仕事帰りに立ち寄ったら、リトグラフの精巧なコピープリントを一枚100万円ほどでローンを組んで買わされそうになったことがある。都会にはああいう商法があるのか、と驚いたものだった(関係ないけど)。
今回はたまたま招待券をいただいたので足を運んだのだが、アールヌーヴォー全盛の商業仕事時代から、晩年の神秘主義への傾倒からスラブ民族の独立を描いた愛国主義時代の大作までが一堂に会していて、想像していた以上に興味深く楽しめた。
今回のミュシャ展では、実際の製作過程を捉えた写真も展示されていたが、モデルにあの流麗なポーズをさせて写真を撮り、その写真をもとに衣装や装飾を付け加えて描き込んでいったようだ。これは、ある種のコラージュだと思った。だから二次元っぽいのか(いや絵だからもともと二次元だけど)。
あと、パリ万博のポスターで、建築物の線画が絶妙な精巧さと力の抜け具合で、非常にマンガ的だと思った。アニメを連想させる女性画とともに、こういうところが日本で人気がある所以なのだと思う。


しかし、私は正直言ってこの人のアールヌーヴォー時代にしか興味はない。晩年の作品は大仰すぎてちょっと…。もちろんそうした作品で彼が伝えたかったであろう、スラブ民族の悲劇には、思いを致すところではあるが。あるグループを鼓舞するための芸術は、部外者には響かないのだろうか。
このミュシャ(ムハ)という人の生涯をたどるにつけ、コマーシャリズムの権化みたいだった人が晩年に大作に挑む…という流れが、ちょっと残念に思えてならない。商業主義〜神秘主義愛国主義…という、芸術家にとっての一つの定型。三島由紀夫とか。