『クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)』

クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)
高校以来、久々に「クトゥルー神話」の短編集を読んでいて、いろいろ考えるところがあった。
ラヴクラフトが提唱した世界観を、他の作家たちが追随し拡張して…というのは当時は面白い試みだったのだと思うけど、現代ならきっと同人誌文化がその役割を担うんだろうな。


ただまあ、クトゥルー暗黒神話大系、旧支配者…なんていうとワクワク感があるけど、どれもこれもワンパターンの繰り返し。
失踪した男の手記が発見されて、畏るべき生き物たちの宇宙規模の戦いに巻き込まれた顛末が語られる*1。3話ほど読んでもう飽きた。
また、我々日本人はそもそも「神の冒涜」という概念を持たないので、もしもクトゥルーの眷族のような生物が現れたとしても、この前のダイオウイカじゃないけど新種の生物発見!くらいの印象しか持たないのではないだろうか。
ラヴクラフトの「旧支配者」も、タコの化物みたいな具象ではなくて、ユングの言う「集合的無意識」的なものとして描かれたら面白かったのかも。太陽のしっぽとか、そういうの。


あと、よくゲームやなんかに出てくる魔道書「ネクロノミコン」ってのが、 元々はラヴクラフトの創作だったというのは初めて知った。これはこれで「意図的な偽書」の典型例である。

*1:手記ではなくてビデオが発見されるという筋立てだけど、映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」って、あれそのまま現代版クトゥルー神話だな。