『二都物語(上巻)』

二都物語 (上巻) (新潮文庫)
♪昨日今日明日〜 変わりゆく私
…というのは谷村新司の(そしてJR西日本の)三都物語で、ついでに言うと浦和から名古屋へ移籍したのは三都主アレサンドロだが、こちらはその本家、ディケンズのA Tale of Two Citiesである。
JRの“三都”は京都・大阪・神戸だけど、本家の“二都”とは言わずと知れたパリとロンドンのこと。フランス革命前夜のパリとロンドンを舞台に、大転換期の狂乱に巻き込まれる男女を描いた作品である…というのは、恥ずかしながら読み始めてから知った次第。
これがディケンズ特有の筆致なのか、物語の展開がものすごく劇的なのである。起伏に富んだ語り口、えっと驚く角度からの導入、そして帰結。これはぐいぐい引き込まれた。
第1巻第5章「酒店」の場面や第2巻第7章「パリでの貴族」のなかで描かれる、革命前夜のパリ市民たちの塗炭の苦しみには息を呑まされ、ドファルデュ夫妻をリーダーとするレジスタンスならずとも「編み物」で落とすべき首(=怠惰な貴族)の数を数えたくなってくる。