『五万二千ドルの罠』

五万二千ドルの罠 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
旅行中はエルモア・レナードの小説が読みたくなる。今回は初期の作品『五万二千ドルの罠』を携行してきたのを読了。
不倫相手との浮気現場を押さえたフィルムで恐喝を受けた主人公が、警察や仲間に頼らず、自らの手で事件に幕引きを図る…という話。筆者が軽妙なタッチで描くクライム・サスペンスに開眼した当初の作品だそうで、ストーリー展開にも多少ご都合主義な感じが見え隠れするが、それにしても日常いかにも聞けそうな自然体の会話部分は、この頃から名人芸の域。


私はその軽妙な会話と登場人物たちの思惑が錯綜するプロット構成が好きで、エルモア・レナード作品を集めているのだけど、考えてみると主人公のほとんどは中年あるいは初老と言ってもよい年齢で、そういう意味では若者向けの小説ではない。アメリカではどういった層に読まれているのだろう?
こう言ってはアレだけど、レナード作品は中年の危機ど真ん中のオッサン向け小説なのかもしれないと、今さらにしてはたと気付いた。それを嬉々として読んでいた自分…。