「推手」

推手 [DVD]
アン・リー、1991年の監督デビュー作。
アメリカに住む息子夫婦の元に移り住んできた中国人の老人が、白人の嫁と軋轢を重ねたり、中国人のコミュニティセンターで出会った同じような境遇の未亡人に心を寄せたりする日常の中で、新たなアイデンティティを模索していく話。
タイトルの「推手」とは太極拳の練習法の一つで、互いに接近し手を触れた状態から押したり引いたりする組み手のこと。主人公の老人は太極拳の達人であり、その間合いの取り方に本作品を見る我々も、何かを感じさせられる。
しかしこの話、アメリカが舞台である必要性は薄かったような気もする。もちろん、異文化との交流というテーマはあったのだけれど、家族そのものが異文化の坩堝でもあるわけだから、その辺をじっくりと撮ることができるのなら、わざわざ外国を舞台に持ち出すまでもなかったと思う。