『小説の読み方 感想が語れる着眼点』

小説の読み方~感想が語れる着眼点~ (PHP新書)
偶然だが、先日読み終えたイアン・マキューアンの『アムステルダム』も例題として取り上げられていてビックリした。他に私が読んだことがあった作品ではポール・オースターの『幽霊たち』や綿矢りさの『蹴りたい背中』くらい。
いろいろと興味深いことは書いてあったようにも思うが、結局それぞれの作品のごくごく一部だけを引用して「小説の読み方」を説こうとすること自体に無理があるように思った。一冊の小説全体を通して感じる印象や背景にある著者の思想などをどう「読む」のか、その辺の参考には全くならない。実際、『アムステルダム』についての章も、紙幅の制約があるのはしょうがないにしても、これは作品の空気の数分の一も表現し切れていないし、(私なりの読み方から言えば)若干誤解しているところがあるようにも思う。
一篇の小説あるいは一人の作家について、この人なりの「読み方」というものを逐一追っていくような本だったら、よほど面白かったと思うのだが。