新津美術館

植物園の隣には新津美術館がある。主に現代美術の展示を行う美術館で、いまは「ファーブル昆虫記の世界」展をやっていた。

愛息と愛娘は建物内の階段をいたく気に入り、何度も昇降を繰り返していた。


「ファーブル昆虫記の世界」展では、『昆虫記』でお馴染みのアンリ・ファーブルの生涯と、彼のひ孫で昆虫記にインスパイアを受けた活動を続けている現代芸術家のヤン・ファーブル(そんな人がいたのか)の作品の一部が展示されていた。展示自体は写真中心なので、「虫さんどこにいるの?」と愛息はやや不満げだった。
この展示で一番印象深かったのが、本邦における『昆虫記』の初訳者が、なんと大杉栄だったという事実。甘粕事件で虐殺された、あの無政府主義者の人である。アナルコ・サンディカリズムである。
会場には大杉栄訳の『昆蟲記』も展示されていた。横にあった解説によれば、フランス語に堪能だった大杉は治安維持法違反で服役中、獄中でフランスの子供向け文学などの翻訳にあたっていたらしく、昆虫記も全巻翻訳を目指していたそうだが、その前に甘粕事件に遭ったのだという。アナーキズムなどもきっとフランス語の原書で学んでいたのだろうから、まあその余技だったということか。