「十二人の怒れる男」

昨日から妻子は私の母とともに金沢の実家に行ってしまった。たまの独り身、仕事帰りに髪を切りに行き、古本屋などを冷やかした後、家に帰って録りためた映画を見る。


うちの会社にはこの「十二人…」に出てくるヘンリー・フォンダ(DVDのジャケット参照)によく似た役員がいて、その人が行く場所にはありとあらゆる災厄が起こるのだが、先日そのことをご本人に言って「もううちの営業所には来ないで下さい」とお願いしておいた。
それはともかく、「十二人の怒れる男」。知らない方のためにあらすじを説明すると、実の父親の殺人容疑がかけられた少年の裁判が行われ、そこに集められた12人の陪審員が判決を下すまでの密室劇である。状況証拠からは少年が犯人であることは間違いないように思われ、最初は12人のうち11人が「有罪」すなわち死刑と判断しているのだが、たった1人冷静さを失わなかった男(ヘンリー・フォンダ)の説得により、次第にみんなの気持ちが無罪に傾いていく…というお話。ちなみに画像は、最後まで「有罪」の意見を曲げない男(リー・J・コッブ)の名台詞「(これまでに)見た映画は全部覚えてる」。
男が主張するポイントは「合理的な疑い(reasonable doubt)がある限り有罪とは言えない」という、ただその一点なのだが、紆余曲折はあっても最後にはみんながそれに同調していくのが、理性と民主主義をオプティミスティックに信用できた時代ならではの展開に思えた。ついでに、アメリカ人というのはディベートが上手だなあと感心させられた。プレゼンの勉強にもなる。


日本でも来年5月から裁判員制度がスタートする。裁判に集められるのは、それぞれがそれぞれの生活を抱えたごく普通の一般市民である。バックグラウンドがばらばらな人間が集められて、果たして何の誘導も受けずに合理的な判断が下せるのだろうか? いざ自分が裁決を下す立場になったとき、果たしてこの「reasonable doubt」という言葉を冷静に思い出せるだろうか…??