「野良犬」

野良犬<普及版> [DVD]
夜、アイロンがけをしながら、BS2でやっていた黒澤明の「野良犬」を見た。

1949年、戦後間もない東京を舞台にしたサスペンスドラマ。復員して刑事になったばかりの村上(三船敏郎)が、拳銃をスリに盗まれる。拳銃を探してバラックの町を彷徨する村上。やがてその銃が強盗事件の凶器となったことが分かる。強盗事件を追うベテラン刑事佐藤(志村喬)とコンビを組み犯人を追い詰める村上だったが、犯人の境遇も自分の人生と紙一重であることにとまどいを覚えてしまう。

冒頭でアスファルトが溶けている映像が流れていたが、とにかく暑くて暑くてしょうがない夏の出来事。昔のこと、当然冷房なんかない。みんなダラダラ流れる汗を手ぬぐいでぬぐって、気だるく団扇を動かすだけ。たまたま自分のシャツにアイロンをかけているところだったのもあって、三船敏郎の背広の背中に汗がにじんでいるのを見ながら、「すぐ染みになって洗濯大変だっただろうな〜」と余計な心配をしてしまった。


強盗殺人犯人と同じく、復員直後にリュックを盗まれて無一文になった経験のある村上刑事が、「自分も一歩間違えば世間に背を向けて悪の道に行っていたかもしれない」と思い悩むのに対し、ベテラン佐藤刑事が「罪を社会や境遇のせいばかりにしても意味がない。悪いことは悪いことで、それをした人間はどんな理由があれ悪人だ」といった意味のことを言っていた。罪人を何人も逮捕していると麻痺してくるさ、と自嘲をしていたし、戦後世代(「アプレゲール」)と戦前世代の違いかな、とも言っていたが、この佐藤刑事の立場は「常識」の重みを説いているのだと感じた。